森博嗣/トーマの心臓
おそらく私なんかが語る余地もないくらい
多くの人にとっての特別な漫画として、
語り継がれていくであろう萩尾望都の「トーマの心臓」を
森博嗣がノベライズするということで、
自然と手に取った。
当然のことながら原作と小説にはさまざまな相違点があるけれど、
その2つの印象を違うものにしている一番の要素は、
全てのことが、オスカーの視点から語られるということだろう。
愛すべきユーリ、トーマ、エーリクの友人であり、
彼らよりは少し大人で、いつも周りのために少し身を引いていたオスカー。
彼を通してしか見えない世界、
彼を通してでは見えてこない世界の両方が
「トーマの心臓」にはあったのだと感じた。
違う作品とは言いながらも、全編に漂う透明感や、
伝わってくる感覚は確かに、私たちがよく知る「トーマの心臓」に通じるもので
これを書いた人が、シュロッターベッツ・ギムナジウムの
静謐で美しい世界に深く入り込んだことのある人だということが、
確かに分かった。
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「束縛をするような身内は鬱陶しいけれど、
信頼していて、自由にさせてくれる人だっていると思うな。
そういう人は、ずっと一緒にいなくても良くて、
でも、どこかにいてくれる。生きている、というだけで、嬉しい。
そういうものじゃない?」
トーマの心臓 Lost heart for Thoma (ダヴィンチブックス)
- 作者: 森博嗣,萩尾望都
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