キック・アス / Dir マシュー・ヴォーン

アメコミのヒーローに憧れる主人公、デイヴ・リゼウスキは、悪友とオタク話に花を咲かせるばかりの冴えない高校生活を送っていた。しかし彼は、ある考えに思い至る。「なぜ誰もスーパーヒーローにならないのか?」と。実際に漫画のスーパーヒーローになることを決意したデイヴは、通販で買ったスーツに身を包み、"キック・アス"として街をパトロールするが、不良たちにボコボコにされ、病院送りにされてしまう。それでもヒーロー活動を止めないデイヴ。ある時、彼が暴漢と戦う映像がYouTubeにアップロードされたのをきっかけに、キック・アスは一躍人気を集める存在になった。ところがちょうどその頃、麻薬取引に失敗したマフィアのボス、ジャンク・ダミゴは、それをキック・アスのせいだと勘違いし、彼の殺害を目論む。そんなデイヴの前に現れたのは、同じくヒーローコスチュームに身を包んだ親娘、ビッグ・ダディとヒット・ガール。いったい2人は何者なのか?そして、デイヴはマフィアから逃れることができるのか。

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冴えない男子高生がスーパーヒーローになるという、いかにもB級な設定が、逆に観たいという気にさせるこの映画。誰もがスーパーヒーローに憧れるのに、なぜ実際に誰もなろうとしないんだ?という彼の疑問は、ばかばかしくも、なるほど確かに、と共感してしまうところがある。子どものときは、誰もが正義の味方になりたかったはずなのに、いつどうしてそれを諦めてしまったんだろう。大人になる過程で失われるその純粋な憧れを、現実のものにしようとする彼に、観る人は自然と、共感と期待を抱いてしまうのではないだろうか。

しかし、そんなとんでも設定ゆえに、映画の内容ももっとぶっ飛んだものを期待してしまったせいか、実際観てみるとコンパクトにまとまり過ぎてしまっていて、物足りない感は否めなかった。主人公デイヴが、あまりにも「普通」な存在過ぎたことが恐らくその原因の1つではないだろうか。スーパーヒーローらしく、もっと無茶をやって、予想外の世界を観せてほしかったかったというのが正直なところ。

ところが、そんな失望を軽く覆してしまうのが、ヒット・ガールという存在。11歳の超絶かわいい美少女でありながら、バタフライ・ナイフや様々な銃器を軽々と使いこなし、信じられない汚い(時に卑猥な)セリフを決めて見せる。そのポップで矛盾に満ちたキャラクターは、日本のアニメやラノベのヒロインに通じるものがある気がする。キック・アスという冴えないヒーローを含め、この映画のすべてが、彼女を引き立てるために用意されたものと言っても過言ではないだろう。

ヒット・ガールにハマれるかどうかが、この映画を楽しめるかどうかの分岐点。
強くてかわいい女の子は、お好きですか?

キック・アス DVD

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