ソーシャル・ネットワーク/Dir デヴィッド・フィンチャー

ハーバードの大学生マーク・ザッカーバーグは、彼女に振られた腹いせに、大学のサーバーをハッキングして女子学生の画像を集め、容姿の格付けサイト「フェイス・マッシュ」を立ち上げた。フェイス・マッシュはすぐに学生の間で話題になり、サーバーがダウンするほどの驚異的なアクセスを集めたが、そのことによって彼は大学から保護観察処分を受け、女子学生たちの非難の的となる。この事件で、ザッカーバーグの驚異的な技術に目をつけたボート部のエリート、ウィンクルボス兄弟らは、ハーバードの学生だけを集めたSNSサイト「ハーバード・コネクション」を一緒に作らないかと持ちかける。しかしザッカーバーグは、彼らのアイデアにヒントを得て、友人のサベリンと共に、全く別のサイト「フェイスブック」を立ち上げてしまう。フェイスブックは爆発的にヒットし、世界に広まったが、その上で様々な人間の思惑が交錯し、ザッカーバーグは、ウィンクルボス兄弟とサベリンに訴えられることになる――。
 

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アメリカではGoogleをも脅かすアクセス数を誇る世界最大のSNSサイト「facebook」の創設者にして、最も若い億万長者と言われる時の人、マーク・ザッカーバーグをめぐる話。といっても、ザッカーバーグ及びfacebookはこの映画に協力はしておらず、監修としてはエドゥアルド・サベリンのみが立っている。そのため、ここで描かれる物語、及びザッカーバーグ像は、ある程度作られたものとして考えたほうがいいだろう。
 
物語としては、非常にステレオタイプで、目新しさはほとんどないと言ってもいい。優秀だけどコミュニケーションが下手だったり、理解が得られなかったり、成功の仮定で友人との関係性が変容したり、富と栄誉を得ても本当に欲しいものは手に入らなかったりするところもすべて、この手のサクセスストーリーではよくある話だ。
 
けれど、この映画に対する観客の最大の関心事は恐らく「ザッカーバーグってどんな人なの?」「facebookってどうやってできたの?」という部分だろうから、そういう意味では、人物も、1つ1つのエピソードも丁寧に描かれていて、それでいてテンポもよく分かりやすく、十分期待に応えるものになっていると思う。
 
また日本人としては、大学に対する文化の違いもおもしろい。自由の国と言いながら、そこには確固たる学歴社会、格差社会が存在する。どこに所属するかということは、彼らにとって私たちよりもずっと重要な、存在意義にも等しい命題のようだ。ハーバード専門のSNSを作ったら、harvard.eduドメインに女の子が群がるだろう、なんて発想は日本ではなかなか生まれないのではなかろうか。そう思うのは、私自身が、所属する大学や組織を全く意識してこなかったからかもしれないが。さらに、ハーバードにはファイナルクラブという秘密結社めいた組織が未だに存在することも驚きである。厳しい審査を経て由緒あるクラブに所属することは、学生にとって最高の栄誉とされるらしい。サベリンはそこに入るため、大学構内でニワトリを一週間連れ歩くことさえしたのだ。
 
もちろん、デヴィッド・フィンチャーらしい手法的な面白さも随所に見られ、ボートレースシーンのチルトシフト撮影など「セブン」以来のファンも十分に楽しめるだろう。恐らく最大の驚きは、双子の兄弟を演じる俳優が実は1人で、CGで2人に見せているということではないだろうか。ちなみにこの撮影で使用されたのは、4Kカメラのレッドワンだそう。
 
ザッカーバーグやfacebook社がこの映画をどう捉えているせよ、これからシェアを拡大しようという日本においては最高のプロモーションになったに違いない。そこまでWEB上で人とコミュニケーションすることに積極的でもない私が、いつの間にかいろんなfacebookページの名ばかり管理者にされている現状からすれば、日本のユーザーがそこで赤裸々に交際ステータスをアップする日も、そんなに遠くないのかもしれない。
 


 
暇な訳ではないが、割と劇場で映画を観られている2011年。次の感想はキック・アスか、マクロスFか。