エグザム/Dir スチュアート・ヘイゼルダイン

自分にとってはついこの前のことのようだけれど、この映画を観てからいつの間にか4ヶ月も経とうとしている……。年内に観た映画の感想を出来るだけ書き留めておこうということで、まずは「エグザム」から。気が向けば、「ハングオーバー」や「リミット」についても書こうかなと。

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合格者には生涯1億円の年俸が約束されるという、破格の条件が提示された就職試験。数多くの志願者たちの中から選ばれた、年齢もバックグラウンドも全く異なる男女8名が、たった1つの採用枠を勝ち取るため、最終試験の会場へ集結する。しかし、そこで彼らに与えられたのは、白紙の問題用紙と、3つのルールだけ。1. 試験監督、及び警備員に話しかけると失格。2. 自分の試験用紙を損なうと失格。3. 退室を選ぶと失格。果たして、彼らが課せられた問題とは?誰が、制限時間内に、たった1つの答えに辿り着くことができるのか――?

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あらすじから察せられる通り、1つの部屋の中だけで物語が完結するワンシチュエーション・ムービー。そこにあるのは、問題用紙、筆記用具、カウントダウンタイマーの他、わずかな部屋の備品のみ。それらと人々の会話だけで、物語は進行していく。最初は無だった彼らの関係性が、徐々に変化し、それに応じて室内の様相も変わってくる。

こういう特殊な条件下における映画として、「CUBE」や「es」、「SAW」を思い浮かべる人は少なくないと思う。けれど、この映画は、それらとは少し趣向が違う気がする。そこで起きる「現象」よりも、ストーリーを進行する秀逸な「過程」を楽しむ映画だと思うからだ。80分という制限時間の中で、どこでどのようにアクションを起こし、隠されたバックグラウンドを明らかにし、関係性を構築しまた破壊するのか。その演出を最後まで飽きずに観られた時点で、この手の映画としては十分成功しているのではないかと思う。

ただ、そこに至る過程が楽しめただけに、自然と期待の集まるラストには、肩透かしをくらった感はある。恐らくこの結末は、理解はできても、誰もが納得できるシンプルな解答ではないからだ。

何度も観たくなるような傑作ではないし、いろんな粗を探せばきりがないけれど、
私はこの野心的な映画を評価する。

限られた条件の中から、何か新しいものを作りだそうともがく人にとっては、
何かしらのヒントになるのでは。

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