インセプション/Dir クリストファー・ノーラン


他人の夢の中に侵入することでアイデアを盗む、優秀な企業スパイの主人公コブ。彼は過去のある事件のため、妻殺害の容疑をかけられ国際指名手配犯となり、子どもたちと離れた生活を余儀なくされていた。ある時、仕事で夢に潜入した大企業のトップ、サイトーから、容疑の抹消を条件に危険な依頼を受ける。それは、「盗む」のではなく、他人に全く別のアイデアを植えつける「インセプション」だった。果たして彼は、この最高難度のミッションを達成し、子どもたちの待つ家へ帰れるのか――。
 

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一部の好評価とは対照的に、DVD化のニュースが流れるまで観たことを忘れていた映画。そういえば、これが上映されてた時は弟が来ていて、時間つぶしにちょうどいいということで近くの映画館に衝動的に行ったら、実は1人2,500円もするプレミアムシートで、後にも引けず仕方なく観たんだった。
 
予告編ではこの複雑な世界を説明しきれなかったのか、単なる夢を舞台にしたアクション映画のような印象だったけれど、蓋を開けてみれば、監督が10年前から構想を練っていたというだけあって、オリジナルでかなり作りこまれた設定に感心した。
 
他人の夢の中に潜入するというだけだったらよくあるフィクションだが、夢が階層を持っていて、下に潜るほど時間の流れがゆっくりになるとか、いつも身に着けている物で夢か現実かを判別するだとか、そういう大小様々なギミックが集まり、CGやワイヤーアクションを駆使した「不安定な」映像と相まって、それなりの説得力を持って夢の世界が描かれている。恐らく、誰もが「夢」というものに対して持っているイメージの何割かは、この映画の中で表現されているのではないだろうか。
 
けれどその一方で、複雑な夢の世界に力を割き過ぎて、主人公の心情などはなんともおざなりな印象があり、個性的なキャラクターも不在で、誰にも感情移入できず終始引いた目で観てしまった。そのためか、長編の映画を観終わった印象としては、なんだかちょっと物足りないというのが正直なところ。
 
ダーク・ナイトの成功に見るまでもなく、クリストファー・ノーランはオリジナリティのある脚本家・監督だと思うので、また新たな作品に期待。
 

インセプション Blu-ray & DVDセット (初回限定生産)

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